米最高裁判決によるトランプ関税というBATNAの崩壊
追記:
今回の最高裁判決では通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミ、自動車への関税に係る大統領の権限に影響がないようなので、日米関係には下記ほどの影響はないかもしれません・・・スイマセン。
トランプ関税が、いわばちゃぶ台返しのような形でひっくり返りましたね。
判決の解説を読んでみると、法的にはかなり自明だったようにも見えてきます。とはいえ、このシナリオがどの程度まで現実的なリスクとして想定されていたのかは、少し気になるところです。
通商法122条に基づく150日間の暫定関税については、合法とされる可能性が高いようです。ただし、それを超える措置には議会の承認が必要になります。しかし中間選挙を控える状況を考えると、長期的な実効性には疑問も残ります。企業が「150日待てばよい」と判断すれば、貿易が一時的に停滞し、むしろ選挙前に米経済が大打撃を受ける可能性すらあります。
交渉学の観点から見ると、これはなかなか大きな転換です。これまでドナルド・トランプの交渉戦略において重要なBATNAを構成していた「関税」というカードが司法判断によって消えた可能性があります。もしそうであれば、彼の従来のBATNAは一気に不安定になり、合意可能領域(ZOPA)は広がります。米国側が譲歩せざるを得なくなり、他国がより強い要求を提示できる状況になるかもしれません。
日本は当初、5,500億ドル規模の対米投資を「約束」しました。関税という圧力のもとでのコミットメントだったわけですが、その前提が揺らぐのであれば、国内では当然、「この約束をどう扱うのか」という議論が出てくるでしょう。
最近になって赤沢大臣が渡米し、逆輸入のハイランダーを公用車にするなんて動きが報じられましたが、こうした動きも、最高裁判決のシナリオをある程度読んで、約束が反故にされないよう関係者が手当てを急いでいた、と見ることもできなくはありません。
首相訪米に際しても、「この投資約束を本当に実行するのか」「リスクの高い案件はなかったことにできないのか」といった点が、外交問題というより国内政治の論点として浮上してくる可能性があります。
とはいえ、少し怖いのはその先です。関税が機能しないとなれば、トランプ政権は別のBATNAを模索するはずです。次の焦点を安全保障分野に移しても不思議ではないです。ウクライナ問題を抱えるNATOとの関係ではルッテが巧みに舵取りしてきたと思いますが、日本に対してもより直接的なプレッシャーがかかる可能性はあります。安保条約や原子力協定を材料にするだけでなく、中国・北朝鮮・ロシアの脅威を煽るすることで、日本に対してBATNAの脅しをかけようとする展開もありえるでしょう。
そんなシナリオを妄想すると、関税で脅されてるほうがまだマシだった、という世界線が来ないことを願うものです。

2026/02/21 10:42 AM - ツイート
