STS学会で報告(みその気候市民会議について)
今年度は自分が代表の科研費獲れなかったので「がんばらんば!」と学会発表で業績コツコツ貯めております。
ということで今回はひさびさにSTS学会@東大本郷。分担させていただいている科研基盤(A)「気候民主主義の日本における可能性と課題に関する研究」の一環で、阪大の八木先生がオーガナイズドセッションを組んでくださり、そのなかの話題提供として、みその気候市民会議についてお話させていただきました。

今回のOSのテーマは「気候市民会議の多様な開催を考える」で、日本国内でもいろいろな形態の気候市民会議が実践され始めているので、その経験から今後の展望を考えようというもの。
みその気候市民会議は地区レベルで実施した(たぶん)日本で唯一の事例なので、それなりに特徴がありました。特に、参加者全員が同じようなところで買い物をして、同じ駅(浦和美園駅)を使っている人たちなので、生活圏が同じがゆえにコミュニケーションがハイコンテクストなものとなり、それが共感(あるいは運命共同体という感覚、相互依存の感覚)を生み出していたように思います。

この点を指摘したところ、オーディエンスから重要なコメントもいくつか頂戴できました。狭い地理的範囲(あるいみニッチ)から出てくるアイディアなので、そのような取り組みがたくさん行われれば、現場から一般化されるボトムアップの気候政策が出てくる(通常は世界・国→現場の一方通行)可能性を秘めているかもしれません。
また、普段顔を合わせている地区の人たちが自然と集まってdeliberateした結果と考えれば、無作為抽出などの仕掛けを使って切り取られた熟議の場を設けることの意味は何だろうという議論にもなったのですが、やはり地区であったとしても、地区のボス、地主、有力者などが存在するわけで、それらの構造から解放された熟議の場をつくることに意義がある(そういう構造から解放させる必要がある)という結論になったように思います。
学会によっては、発表するだけでオーディエンスからの反応があまりない、ディスカッションにならないようなところもありますが、今回はとても有意義なセッションでした。こういう場はほんとうに勉強になるので、来年度以降も「がんばらんばね!」と心を新たにした次第です。
あと、久々に対面でお会いできた人たちがたくさんいたので、それもいい機会になりました。来年は懇親会出てもいいかも。
2024/12/02 8:14 AM - ツイート
革新的技術導入の合意形成について講演@第70回土木計画学研究発表会

さる週末は、岡山まで弾丸出張して、第70回土木計画学研究発表会のスペシャルセッション「革新的技術の社会実装を阻む合意形成の谷」で発表してきました。出張移動の顛末は別途書こうと思いますが、今回はマジメに発表の内容について。
正直、データに基づく実証的なお話ではなかったので、あまりインパクトのある話ではなかったとは思いますが、土木学会という工学系の技術者が集まる場で、科学技術社会論的な視点から問題提起をさせていただいた感じです。
その場で言いたかったことは、革新的技術というほどのものの導入であれば、我々の日常が便利になるという程度では済まず、社会の「構造」までをも変化させる、つまりトランジションが起きるということ。だからこそ、その導入について社会として熟議が必要ということを述べたうえで、次いで、トランジションにおけるIncumbent問題をお話しました。

Incumbent問題というのは、現在の構造下における主要ステークホルダー(incumbent)は、現在の構造の受益者であるため、彼らの「合意形成」を行う、トランジションを阻む結論へと導かれてしまうこと。よって、革新的技術についても、ステークホルダーの合意形成を図ると、結果としてトランジションを阻む方向、つまり技術導入を阻止する方向へと社会が導かれてしまうという問題があるのです。もちろんそのトランジションが長期的視点からしても望ましくないのであれば、阻止したほうがよいのでしょうが、長期的にはトランジションが必要であるにもかかわらず、短期的視点から阻止されるのであれば、人間社会として(将来世代への責任として)よろしくないことでしょう。

要は、革新的技術の導入についての社会的な熟議は必要だけど、ステークホルダーの合意形成を図ろうとすると必要な技術導入も止められちゃうよということ。で、「どないすんねん?」という問題提起をさせてもらいました。
発表時間も短かったので解決策は敢えて言いませんでしたが、たとえばトランジション・マネジメントの考えを採用するのであれば、ステークホルダーではなく、フロントランナー(未来のステークホルダー)を巻き込んでボトムアップで徐々に技術を広めていきましょうという解決策が示されているわけです。
聴衆のみなさんにどれくらい伝わったのかは微妙ですが・・・こういう問題提起を、敢えて土木技術者が集まったところで続けていきたいとは思います。

あと、何名かの方と10年以上ぶりに再会できたのが大収穫でした。時がたつのは早いw。
2024/11/18 1:41 PM - ツイート
