交渉学 Negotiation Group mmatsuura.com
メニュー:基本情報 メニュー:研究情報 メニュー:ブログ メニュー:ボストン メニュー:交渉学 メニュー:その他    

交渉学講座


その他コンテンツ

 

 

 


Lecture #2: 配分的交渉
- Distributive Bargaining -

今回はDistributive Bargainingの話です。日本語に訳せば、「配分交渉」とでもなるのでしょうか。ここでは言葉の意味合いが不明瞭にならないように、英語表記を使うことにします。

単純なケースを考えてみましょう。いま、あなたが電車に乗っていたら、とある大富豪がやってきて、あなたと隣りにいる全く見知らぬ人に、

「ここに100万円あるから、2人で山分けしなさい。2人の取り分について合意ができたらこの100万円をあげよう。私の金を受け取ったら君たちは二度とお互い会ってはならない。」

と言い寄ってきたとしましょう。このとき、例えば以下のようなケースが考えられます。

1)五分五分で分ければ、あなたは50万円、見知らぬ人は50万円をもらえます。
2)どうしても80万円をもらうと相手に押し切られれば、あなたは20万円をもらうことになるでしょう。
3)逆にあなたが80万円を分捕れれば、相手は20万円しかもらえないことになります。>

いずれの場合も、2人がそれぞれ得る合計はどうやっても100万円を越すことはできません。また、常識的に、お互い40万円ずつもらおう、などという合意もまずないでしょう。残りの20万円をドブに捨てても仕方ないですから。ということで、

あなたと相手が得る合計は常に100万円で、
あなたと相手との交渉はその100万円の分捕りあいなのです。

このような交渉をDistributive Bargainingといいます。Distributeとは「配分する」という意味がありますから、上のケースでは100万円を配分する交渉という意味でDistributive Bargainingと言えます。また、経済学等に明るい方はお気づきになられたと思いますが、取り合いをするということで一種のZero-Sum(ゼロ=サム)の状態にあり、Distributive BargainingのことをZero-Sum Bargainingと呼ぶこともあります。ただし、上の例では、Sumはゼロではなく100万円なので、正確にはZero-SumではなくてFixed-Sumというべき状況です。戦争による領土の取り合い、子供の親権争いならゼロサム交渉と言ってもよさそうです。

さて、このような交渉では、当然のようにお互い険悪なムードにならざるを得ません。なぜなら

相手が得をすれば、そのぶん自分が損をする

わけで、できるかぎり自分の取り分を増やそうと躍起になるわけです。

「ここで譲歩し、恩を売っておいて、後でなにか取り返すという戦略もあるのではないのか?」という疑問もあるかもしれません。しかし、将来、何らかの見返り等が期待される交渉はDistributive Bargainingとは言えません。そのような戦略をもしあなたが用いれば、あなたは、この交渉で得る分け前に加えて、将来の見返りの期待値の現在価値(下手な文章ですいません)を得ることになります。よって、あなたと相手の得るものの合計は100万円+見返りの期待値の現在価値となり、この交渉により新たな価値が生み出されています。そのような交渉はDistributiveではなく、Integrative Bargainingとなるわけですが、Integrative Bargainingの細かいことについては後に述べます。

「誰だって100万円を五分五分にわけるんじゃないの?」という考えをもたれる方も多いと思います。確かに私もそうだと思います。しかし、Distributive Bargainingにおいては、合法的に「恐喝」を行うことができ、それによってより多くの分け前を得ることが可能です。たとえば、相手が

「俺が80万円もらう。もしあと3秒以内に合意しなかったら、俺はこの話から降りる。20万円でも何ももらえないよりいいじゃないのさ。」

と言われたらあなたはどうしますか?腹は立つでしょうが、相手が本気ならかなり焦ることでしょう。もし、あなたがリスク回避的な方で、相手がリスク志向的であれば、あなたはきっと、不利な配分に甘んじることでしょう。
もしあなたもリスク志向型で、2人で「80万円もらえないと交渉決裂だ。」と言いはっていたら、合意が得られず、せっかく天から降って沸いたような話なのに、100万円は誰か他人のものとなってしまうでしょう。

実際に、ある交渉が>Distributive Bargainingであったり、あるいは交渉当事者がDistributive Bargainingだと認識していると、このようなリスク志向型の衝突という形で交渉が決裂してしまうケースが多々あると考えられます。今回扱ったような「降って沸いたカネ」であれば、少しでもいいからもらっておこうという気になるでしょうが、もしあなたのお気に入りの骨董品の売買交渉であったとしたらどうでしょうか?

では、どうすればいいのでしょうか?

次回は対処策としての統合的交渉-Integrative Bargaining-をお話します。

今日はこれまで。

 

(c) 1996-2006 Masahiro Matsuura, All Rights Reserved.