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交渉学講座


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Lecture #1: 交渉学とは

すなわち、「世の中のあらゆる交渉について研究する学問」


経済学(ゲーム論)、社会心理学、政策科学、法学などから派生し、体系化されつつある学問です。一般的にNegotiation Theory、単にNegotiationと呼ぶこともあります。

交渉学といっても、様々な視点から研究が行われています。ハーバードやMITにおいても、ゲーム論からの数理的研究(意思決定分析)も行われていますし、また、ビジネス交渉を念頭に置いた実践的な訓練も行われています。


交渉学にも真っ向から対立するアプローチがあります。

強硬な態度、策略などを用いて交渉を勝ち取る派
協調的な交渉によってお互いの便益を高めようとする派

です。前者は、近年になって衰退の一途を辿っており、事実、MITのビジネススクールであるSloan School の授業も後者に転向したそうです。あくまで私の意見ですが、最近では前者のことを交渉学とさえ呼ばなくなっているように思えます。流行り廃りの問題もあるでしょうが、基本的には協調的交渉を目指す研究を交渉学と呼ぶようになっている気がします(あくまで感想)。

後者は"Mutual Gains Approach""Win/Win Negotiation"などと呼ばれ、

相手が自分よりも重要視するものと、自分が相手よりも重要視するものを交換する

ことによって両者の便益を高めるという、パレート改善の考え方を用いています。このお題目を前提として、数理モデルを検討してみたり、心理的な阻害要因を検討してみたり、交渉に基づく政策形成手続の枠組みを検討してみたり、といろいろな視座から社会問題等について検討が加えられています。

基本的には経済学の影響が強く、「合理的な個人」を前提として検討されてきましたが、最近では国際交渉への関心の高まりから「非合理行動」に焦点を当てた研究も増えつつあり、それらをどう合理的に説明するか、また交渉学自体に内在する合理性至上主義の問題点などが議論されています。

最近、このような交渉学のことを(半ば自嘲的に)、ハーバード流、ハーバード学派、ケンブリッジ流(英国ケンブリッジ大のことではなく、ハーバード/MITのあるケンブリッジ市のこと)などと呼んでいるのを耳にしました。それだけ、交渉学の分野ではハーバード大界隈の影響力が強いということです。


お互いに利益をもたらすパレート改善的物々交換、取り引きは一見、容易なことのように思えますが、実際の交渉においてはさまざまな困難があります。例えば、以下のような交渉を決裂に導く罠が待ち構えています。

策略・戦略のミス
取引きで得るものを、自分はあまり高く価値をおいていないようなふりをし過ぎる
不安による交渉開始の行き詰まり:
話し合うという行為そのものが相手に弱みを見せることになるのではないかという理由から、当事者全員が対話を始めること自体言い出せずにいる
権利・主義・教義:
身を呈してでも守らねばならぬ、絶対に譲ることにできないことがあり、取引など「ありえない」 取引を考えること自体が何かの冒涜になる
情報の非対称性 (asymmetrical information):
ある当事者が他の当事者に比べて正確な情報を得ていないと、当該当事者は交渉で損をする(loserになってしまう)
囚人のジレンマ (prisonner's dilemma):
相手を出し抜くことで自分が得するゲームの構造だと交渉当事者間の協調的行動ができないというゲーム論のクラシックセオリー
選択的認知 (selective perception)、反応的逆評価 (reactive devaluation):
自分に都合のよいことだけ人間は「正しい」と思うため、交渉相手を全く信用していないと、相手の言うことを全て嘘だと思い込んだり、逆に相手言っていることの裏がホントのことだと思い込んだりすること

このような障害により、交渉はなかなかうまくいきません。ストライキや離婚裁判など、数多くの場面でこのような原因による「行き詰まり」が見られます。

交渉を成立させることによって双方の便益が増加しそうなことがわかっていても、なぜ交渉が行き詰まってしまうのでしょうか?

(ハーバード流の)交渉学は、いかにしてこのような行き詰まりに陥らないようにするか、あるいは行き詰まりから脱出するか、について幅広い分野の知識を用い、さらに実際の経験に基づいて、効率的な交渉への指針を与えています。

 

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