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科学技術イノベーション政策

合意形成の研究と実践


ステークホルダー合意形成を試みる実践のもよう

さまざまな政策に関する対話や合意形成のあり方について、実践的な研究を行っています。

コンセンサス・ビルディング手法は1970年代より、米国の都市・地域計画、環境計画を中心に用いられてきた手法です。最近では米国にとどまらず欧州、中東、アジア、南米など世界各地での実践が始まるとともに、米国内では科学技術政策や福祉政策など他分野への展開が見られます。

具体的には、行政機関などが公共政策を策定する際、不偏的(non-partisan)な立場にある専門機関に合意形成プロセスの運営を委託し、その専門機関がステークホルダー分析によりステークホルダー(利害関係者)を抽出した後、ファシリテーター・メディエーターの介入した対話プロセス(委員会)を運営し、大多数のステークホルダーが受諾できる計画(コンセンサス)を検討しようという取組みです。

ステークホルダー分析(stakeholder analysis)は、コンセンサス・ビルディングの一環として、対話に参加すべきステークホルダーを特定する手法です。本来はコンセンサス・ビルディングに向けた事前準備として実施されますが、企業CSRや政策分析の手法としても応用できる可能性があるのではないかと思います。ステークホルダー分析は、紛争アセスメント(conflict assessment)、関係者分析などとも呼ばれます。東京大学公共政策大学院において小職担当の講義「政策プロセスマネジメント」では、ステークホルダー分析の方法論を実習を通じて実践・教育しています。

共同事実確認(joint fact-finding)は、専門的知見(特に最新の科学技術に関わる情報)が絡むコンセンサス・ビルディングにおいて活用される技法です。ステークホルダーが対話で合意形成を試みる現場では「何が事実か?」「何が正しい予測か?」についての合意形成を図ることができずに、結果としてコンセンサス・ビルディングの最終目的である政策形成、すなわち「これから何をするか?」という課題の検討が進まないことが往々にしてあります。共同事実確認は、ステークホルダーとは別に、専門家パネルを設置し、ステークホルダーとの協働を通じて専門的知見の情報をとりまとめることで、ステークホルダー対話における事実情報、専門的知見を一元化しようというものです。

小職の関わりですが、2000年前後から米国における事例紹介などを開始し、交渉学と併せて講義講演などを通じて情報提供を積極的に行っています。2005~6年には、徳島で行われたコンセンサス・ビルディングの取り組み(北常三島交差点交通安全方策検討委員会の運営)にアドバイザーとして関わるとともに、国内導入における課題の実証研究も行いました。2008年には「コンセンサス・ビルディング入門」を翻訳、2010年には「実践!交渉学 いかに合意形成を図るか」を上梓しました。最近では、各地の個別具体的な事例にかかわるとともに、社会規範・制度と合意形成手法の相互作用、科学技術政策への適用などに着目して研究しています。

また最近では、これらの交渉を前提とする手法に限らず、熟議(deliberation)を含め、デモクラティックな議論のあり方について、幅広く研究しています。

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